よろず手控え帖

追記の多いブログ

劇場版サンダーバードとドキュメンタリーのブルーレイ

 日本より『サンダーバード知名度の低いアメリカに、劇場長編のブルーレイ化の先を越されるという苦々しい思いをしたことを忘れるくらい、めでたい発売がやってきました。そう、スーパーマリオネーション版サンダーバードの劇場作品2本+ドキュメンタリーのブルーレイが発売されたのです!

 

 

画質 

 劇場版2作品の画質については、「テクニスコープ」という方式を採用している作品に共通して言えることですが、空など明るめの広い面積があるシーンなどでフィルムグレイン(粒子)が多め。フィルムの方式上、どうしても目立つのですが、これはテレビやプレーヤーでノイズリダクションを使用すれば多少軽減できるし、粒子が見えることで、最近の映像にはないフィルムっぽさ、と肯定的にも捉えられるでしょう。

 それよりも、ハイビジョン化で色表現の幅が広がっていることの方が大きいです。サンダーバード各機体やユニフォーム、ミニチュアの色が鮮明(色が濃くなったという事では無い)になったことが印象的。精細感もLDやDVDより当然アップし、ミニチュアや人形・室内セットなど如何に細かく作られていたかが再確認できます。

 数年前にファミリー劇場で劇場版2作品が放送されたのですが、その際の放送素材とブルーレイは異なる点があります。ファミ劇で放送された物は、1作目のオープニングがなぜかシネスコサイズの画面の上下だけでなく、左右に黒味の付いた額縁放送でした。それと、DVDやLDと同様ゼロXの組み立てシーン後半にスタッフクレジットの表示されない映像でした。ブルーレイは元の状態になっておりクレジットがあります。

 このファミ劇の放送の物とブルーレイの画質を比べてみました。ファミ劇のは、放送波に乗せるための映像ビットレートや解像度(少なくともスカパーではフルHDではない)にある程度制限があるので、輪郭部にモスキートノイズと呼ばれるノイズが散見されます。ブルーレイは映像フォーマットの規格上限までのビットレートが使えることもあり、フルHD解像度でもモスキートノイズは目立ちません。

 

 

日本語吹き替え 

 今回のブルーレイには、過去のDVDには収録されていなかった

も収録されています。

 残念ながら劇場公開時の日本語吹替は未発見なため収録されていません。今回の発売に際し、発売元のニューラインさんが再調査を行ってくれた結果、2003年までは確実に存在していたことが確認されました。

調査の経緯はこちらのツイート群

  2003年というのはNHK新録版(DVDやブルーレイにも収録)が作られた年です。この時に捜索の手をもう少し広げてくれていれば……。しかし、レンタル会社というのは各地に複数あったようなので、奇跡的にフィルムがどこかに残っていてくれて、持ってるという方がこれらのTwitter投稿をどこかで見かけてくれることがあればもしや、と思う所です。

 前にこのブログに書いた記事で、レーザーディスクの『サンダーバード6号』にはシーンが欠落しており吹替音声が無い部分があると書いたのですが、このことについてはボックス付属のブックレットにも記載されていました。

 そして、『サンダーバード6号』のブルーレイには劇場公開時日本語吹替の音源から流用されたソノシート音源(ソノシートそのものから取った音ではなく、権利元に残っていた6㎜テープから音を取ったという)を使ったダイジェスト映像が収録されています。これは今までソノシートでしか聞けなかったので、デジタル化でソフトに収録されたのは快挙です。

  

 

ドキュメンタリー

 そして、ドキュメンタリー「ようこそ"サンダーバード"スタジオへ」は、過去のDVDに収録されていた映像特典のインタビューとは一線を画す作品です。当時のスタッフがもうすぐ解体される撮影スタジオ跡に再訪して証言する形ですが、スタジオの間取り図が表示されるも分かりやすいです。

 さらに当時撮影に使用された人形やミニチュア、レプリカなどが置かれ、それを見ながらスタッフが証言します。元スタッフも心動かされるものがあるんだな、という様子が伺い知れるのも良かったです。日本語題名ではサンダーバードの文字が入っていますが、原題は『Century 21, Slough』であり、『サンダーバード』以外の作品についても取り上げられています。

翻訳

 翻訳についてですが、『サンダーバード』や『キャプテンスカーレット』他の本編から引用される映像があるのですが、その部分の日本語翻訳が間違っているところがあります。ドキュメンタリーのオープニングで、2号のバージルがスコットの移動指令室(モバイル・コントロール)と通信する音声が使用されていますが、その日本語訳が「2号遠隔操作 離陸準備完了」となっています。これは「(2号から)移動指令室へ 離陸する」というの正しいでしょう。

 さらに『キャプテンスカーレット』のグリーン少尉が「ディスティニー・エンジェル 直ちに発進せよ」と言う所が、「楽しませろ」「すぐ発進せよ」となっていたりします。

 他にも、スタッフがサンダーバード1号発射場にあるレモン絞り器の話をするところで「真空ブロワ」という言葉が出てくるのですが、これは「バキュームフォーム(真空成型)」という造形法のことを言っていると思います。

 熱したプラスチック板などを複製を取りたい形状に押し付け、下から空気を抜いて真空に近い状態にして形状複製を取る方法です。上の動画では手動でポンプ動かしてますが、専用の電動ポンプでやったり、掃除機でやったりやり方は一つではありません。 追記:どうやらこれは勘違いだったようです。絞り器の形が、バキューム(排気用設備のこと?)とかの形に適していた、というようなニュアンスのようです。

 他にも細かいのはいくつかあるんですが、このドキュメンタリーは劇場版2作品のブルーレイの発売決定後に、ドキュメンタリー制作元の売込みにより急に発売が決まったそうなので、日本語字幕のチェックに時間が取れなかったのでしょうか。

  字幕で言うと、劇場版1作目に過去に発売されたDVDには未収録で、ブルーレイで新たに収録された『メイキング・オブ "サンダーバード"』というドキュメンタリーがあるのですが、これの日本語字幕でも変なところがあります。

 『サンダーバード6号』の本編からの引用で、パーカーがFAB1の運転席で喋るシーンがあるのですが、これが「カラスに石を当てた」となっています。これはコブラ使いが笛でサンダーバードの曲を吹くのを見て発する言葉で、英語では「well... stone the crows.」です。直訳になってますね。

 コックニー英語(ロンドン訛り)の話すパーカーなので、意味としては「こりゃ驚いた」とかそんな感じで、DVDやブルーレイの字幕では「面白い所だ」。吹替では「有名になったんもんだ」となっています。

 

 今回のブルーレイ発売で、ターボチャージドなど再編集版等を除けば、サンダーバードという題名を冠した作品はほぼブルーレイ化されました。残すは来年上映を控えている「サンダーバード55/GOGO」の日本盤ブルーレイ化と、サンダーバード ARE GOシーズン2・3のブルーレイ化です。

 GOGOはネット配信すると発表されていますが、是非ともブルーレイ化をお願いしたい。GOGOの元作品『The Anniversary Episodes』には、舞台裏映像やメイキングドキュメンタリーなど、特典映像になりそうな映像があるので、それらを収録して欲しいですし。

www.youtube.com

vimeo.com

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com

ARE GOシーズン2と3についても、海外でも配信がメインになったせいなのかDVD化のみで、未ブルーレイ化。シーズン1の日本盤ブルーレイを個人輸入している海外ファンもいる事態です。日本ではスーパー!ドラマTV放送後、シーズン2までしか配信しておらず、シーズン3は未配信状態。たぶんNHKはシーズン2と3は放送してくれないと諦めています。

追記

mech.hateblo.jp