特車二課棟
孤立した立地で自給自足に近い生活が可能、宿直設備も完備されているために必然的に二課棟内でのお話が多く、二課の建物設定がお話に盛り込まれ、面白いストーリーが生み出されているのが『機動警察パトレイバー』です。
細かすぎるというのは少々誤解を招きそうですが、必要だったために作られた設定でしょう。また、こういった設定はバックストーリーを生み出す元になっていたりするので、色々妄想するには持ってこいな二課棟です。
- 二課棟の変遷・場所
- 漫画版
- パトレイバーの世界・時間軸
- 特車二課棟・埋立地
- たてもの探訪「特車二課棟」編
- 旧社員寮(宿直室・食堂)間取り図
- 実写版パトレイバーの二課棟はどうなのか
二課棟の変遷・場所
劇場版1作目で、アーリーデイズ(初期OVA)の設定画を元にしつつ、更に細かく設定された二課棟の設定画が作られます。それがTVシリーズに流用され、この二課棟で数々の物語が繰り広げられたわけです。それらのシーンがどこで起きていたことなのかが分かると、更に楽しめるのではないでしょうか。というわけで、その辺を書いていこうと思います。
特車二課棟は、東京湾岸の孤立した埋立地にある建物。もともと民間企業工場として使われていた建物で、工場の脇には2階建ての社員寮もある物件です。アニメ設定資料には、その頃の名残がたくさん見受けられます。
所在地は諸説あるようですが、アニメ雑誌の特集やLDBOXの冊子、バンダイから出ていた本などから、東京都大田区城南島の近くにある架空の埋立地という線が濃厚です。
追記
2018年12月に開催されたパトレイバー30周年展トークショーで、ヘッドギアの伊藤和典さんが
特車二課の場所は、ここという場所は特定していない
と言っていました。30年の間にムック本や図で色々と出ているが、原作者のヘッドギアとしては「東京湾に面した孤立した埋立地」くらいの立地である、という考えなのではないかと思います。新プロジェクト「パトレイバーEZY」はTV・NEW OVAの30年後の話になるとの事で、特車二課棟は物語の中でどう描かれるのか。そもそもあの二課棟が登場するのか?例えばバビロンプロジェクトが途中で中止になり、作られた人工島や埋立地が利用されず中に浮いた土地になって二課棟は移転したとかいう事になったりするんでしょうか?どちらにしても二課棟を描く背景美術のクォリティアップにも期待です。
新作パトレイバーEZYはあれから30年後の話? - よろず手控え帖
---追記ここまで---
13号埋立地(お台場エリア)あたりと言われることもあるようですが、それはアニメ製作当時の「13号埋立地の閑散とした風景を」イメージしている、という事ではないかと思います。
個人的な思いをぶちまけると、特車二課棟内を歩き回れるプレイステーションVRのゲームかコンテンツが発売されたら、プレイするためにプレステ本体やPSVRと共に買うから、どっか出してくれ。
漫画版
ゆうき先生作の漫画版の二課棟は、アニメのとは別の形です。上空からみるとHの字になっています。Hの縦棒2つの部分が各小隊のハンガー、真ん中の横棒に相当する部分がオフィスなど。
マンガやアニメの建物間取りを検証する「名作マンガの間取り」という本があります。この本にマンガ版二課棟の間取りが出ています。しかし、著者もあとがきで「空想で補っている」点があるとしていますし、ゆうき先生が考えていたであろう間取りとどのくらい一致しているかは不明です。
漫画と初期OVA(アーリーデイズ)とで共通しているのは隊長室のレイアウト。ただ、共通しているのはアーリーデイズまでで、劇場版、テレビシリーズでは劇場版制作時に改訂された美術設定が流用されています。
パトレイバーの世界・時間軸
この記事の趣旨とはちょっとズレるのですが、パトレイバーの時間軸と言うか、世界軸はいい意味でかなり大雑把です。アニメにしろ、小説にしろ、漫画にしろ、ゲームにしろ、物語の書き手によって、ほぼ自由にどの世界の続きであるかを想定し(特にどの世界でもないというのもあるようです)、創作されています。
初期OVA(アーリーデイズ)しかない頃に、バンダイから出版された「パーフェクトマニュアル」などの頃から、アニメと漫画を混在して登場キャラ(榊班長)に語らせたりしており、今現在の視点から見ると新規ファンの方は??状態のこともあるかと思います。
パトレイバーの作品群が「パラレルワールド」であるという認識と設定が頭にない人が語ったり書いたりしている記事というのは割とあって、アニメと漫画を混同して記事にしている現象は、2000年代初頭まで散見されてました。
しかし、普通に視聴していて「同一の世界」として分かるのはTVシリーズとNEW OVA(後期OVA)です。ヘッドギアのゆうき先生のツイートでは
劇場版1,2は初期OVAの続き。TVシリーズはそれとはパラレルで後期OVAに続きます。漫画版もそれらとは並行。『XIII』はTVシリーズ世界かな。 RT @JRkumoha211: @masyuuki それは初耳です!パラレルワールドなんですよね?劇場版とOVAも違うんですね?
— ゆうき まさみ (@masyuuki) 2012, 11月 10
ということです。ただ、WXIIIのDVDに収録されている出渕、高山、遠藤コメンタリーで出渕さんが13号が出現する備蓄基地について
設定的には一応パト1の後なんで、箱舟が崩壊してその代用として使われている基地
そしてイングラム2号機の頭のデザインに関しては
今回の2号機ってのは実はパト2の時に使った2号機なんですけど、パト2の時の後ろ(注釈:後頭部)これってヘルダイバー用の部品を、その時の設定としては急遽使ったっていうような形なんですけど、それであそこだけちょっとオリーブドラブに塗ってたりしたんですけど、今回はまぁ別な時代だしいいやって、白く塗ってまあそういう部品があったというふうな解釈でやらさせてもらってますけど
と発言していたと補足しておきます。
先日、Twitterのフォロワーさんと「実写版」のエピソード9「クロコダイル・ダンジョン」に熊耳さんが映ることについて、一体実写版はどの世界と繋がっているんだろう?というような事を話していたところ、エピソード9担当の田口監督ご本人から返信を頂きました。
@_oheru @aniki_sergeant 大丈夫。少なくともep9の世界にはおたけさんがいて、それに対して総監督は何も言っていないし、TNGの世界ではあのシロワニ事件はあのまま起きている訳ですから。少なくともTVシリーズ・新OVAでも「押井脚本回」は地続き、と解釈してます。
— 田口清隆 (@TaguchiKiyotaka) 2014, 11月 12
つまり……
このように、パトレイバーはヘッドギアのみに限らずクリエイター達が世界観を共有して創作するメディアミックスであり、レイバーが存在する世界という根幹の設定を維持しつつ、ヘッドギアメンバー5人らがそれぞれがクリエーターとして独自のテイストで創作している作品であるということでしょう。
なので、この話とあの話の辻褄が合わないとか、その辺りにこだわらないで力を抜いて見ればいいと、私個人は思っています。
特車二課棟・埋立地
まず、二課の立地が湾岸になった点ですが、企画が練られて行く中で埋立地に決められた影響はかなり大きいのではないかと思うので、そのへんも過去のインタビュー等から掘り出してみたいと思います。
(ゆうき)押井さんと伊藤さんが当時わりとツーカーだったので、押井さんのアイディアなのか、伊藤さんのアイディアなのかがわかりづらいのですが、基地を埋立地にというのは、伊藤さん、押井さんから出てきたアイディアだと思います。僕はもともとミニパトから発想していたので、街中を舞台に考えていたけど。 出典:別冊宝島1476
―埋立地という設定は。
伊藤 あれは最初、迷ったんですよ。西荻窪あたりにしようという案がひとつと、あとは埋立地にしようという案がひとつ。途中まではわりとグレーなままでかいてた。最終的に埋立地に決定したのは押井さんだったと思います。
<略>
―すると出動するのにいちいちそこまで行かないといけなくなるわけですね。そこでまたドラマが生まれたりするわけですね。そういうアイディアを出したり引っ込めたりしながら進んでいったんですね。
伊藤 そうですね。バビロンプロジェクト絡みの話はゆうきくんのアイディアのときからあったので、それなら湾岸じゃないか、ということで。
―バビロンプロジェクトと絡ませるのにも都合がいいと、最終的に埋立地で決まったわけですね。
伊藤 でも結局は押井さんが埋立地が好きだから(笑)。それに尽きる気もしますが。
―伊藤さん的には、埋立地にこだわっていたわけではない?
伊藤 僕はどっちでもよかった。ただ、のちのちを考えると埋立地のほうが楽だろうなと。とは思っていましたね。孤立した状況を作りやすいから。
―そうですね。作品の中でも何度か分断されていますね。 出典:別冊宝島1476
(押井)僕が参加する前の企画では、街なかにある警察署からロボットが出動する設定で、それはやめようよと。現場の立場から言うと、街なかっていうのは大変なんです。背景も細かく描かなきゃいけないし、設定も増えるし。飛び出せばすぐ車や通行人もわんさかいるし。だったら埋立地でいいんじゃないかと。 出典:別冊宝島761
埋立地に決定したのは漫画版にも大きく影響していると考えます。廃棄物13号や最終話のクライマックスも、孤立した場所だからこそ可能になった展開ですね。街なかに二課棟があった場合、最終的に埋立地で13号と戦う事になったとしても、そこまで移動しなければなりませんし、最終話の二課棟襲撃も違う方法で行われていた事でしょう。
肝心の二課棟の話に戻りましょう。最初に初期OVA(アーリーデイズ)で使われた二課棟の設定があります。これは、ゆうきまさみさんが描いたものであることがインタビューなどで明らかになっています。
第3話までは美術(背景)設定も僕が書きました。……だから、あのOVAシリーズで使われている特車二課の建物は、僕が描いたものなんですよ。
出典:THIS IS ANIMATION THE SELECT 機動警察パトレイバー2 the Movie
出典:機動警察パトレイバー完全設定資料集vol.3 劇場編1
これら設定画は、機動警察パトレイバー完全設定資料集vol.3 劇場編1に、特車二課関連美術設定初期案として6ページ掲載されています。
この初期OVAの設定を元にして、劇場版1作目『機動警察パトレイバー THE MOVIE』で、埋立地・建物の構造や間取りが詳細に設定されました。パトレイバーのテレビシリーズやWXIIIで作画監督を務め、パトレイバーの大ファンもある髙木さんに伺ったところによると、この設定は劇場版にレイアウトとしてクレジットされているデザイナーの渡部隆氏によって作られたもの、ということです。
@_oheru 「レイアウト」でクレジットされているデザイナーの渡部隆氏です。
— 高木⚓ 弘樹 (@takawokukuru) January 13, 2016
追記:同じくレイアウトでクレジットされている田中精美氏も、共同作業していたらしいです。
二課棟 俯瞰図
出典:THIS IS ANIMATION PATLABOR THE MOVIE & OVA 機動警察パトレイバー設定資料全集
南西からみた特車二課棟。正面玄関側が西、海側が東、右側・第2小隊ハンガーが南、左側・第1小隊ハンガー(増築されている)が北。
ジャンボジェット機が轟音を出して飛んでいる様子が描かれているのは、埋立地の南に羽田空港があるからです。新OVAのエンディングでも、香貫花の頭上を羽田へ着陸するらしいジャンボジェット機が飛んでいます。
ハンガー中央の屋根に鉄塔があります。ハンガーの屋根は高さが17〜18mくらいあるはずなので、鉄塔のてっぺんは相当高いはずです。ここからは、西南西に富士山が見えることになっています。TVシリーズ第3話「こちら特車二課」では、整備員が見張りに使いハシゴを滑り降りてましたが、昇り降りは結構大変そうです。
北にある第1小隊ハンガーは増築されて少し長くなっています。この内部が写っているシーンが劇場版2作目にあるのですが、この時は特に何かあるようには見えませんが、昔は何かの設備があったのでしょうかね?
埋立地 全体俯瞰図
出典:THIS IS ANIMATION PATLABOR THE MOVIE & OVA 機動警察パトレイバー設定資料全集
東(海側)から見た、埋立地全景。広すぎとも思える埋立地に、二課棟がぽつんと建っています。南と東に船着場もあります。西の陸地には湾岸高速が走っており、二課専用インター(帰還用)があります。
TVシリーズ第3話「こちら特車二課」で、特車二課の高速艇が登場しましたが、普段は南の船着場に停泊しているようです。そして、漁で過積載して座礁したのは東岸壁の南寄りの角のあたりのようです。
出典:TVシリーズ第3話「こちら特車二課」
劇場版1作目で捜査課の松井刑事が後藤隊長の元に訪れ、2人で会話をしている周りで整備員が浮き桟橋やゴムボートで釣りをしているシーンがありますが、あれは東の岸壁です。他の話の回でも釣りといえば大体この東岸壁です。
出典:TVシリーズ第29話「特車二課壊滅す!」
出典:機動警察パトレイバー 劇場版
劇場版1作目では、この東の船着場にスロープを設置して、ここからレイバーキャリア(劇場版1の設定画だと特殊運搬車という名前)と指揮車が出撃して行きました。
通信塔
二課棟の北東には通信塔も立っています。新OVA第8話「火の七日間」で、ここに陣取る埋立地通信派に対し放水をしている様子でぐらいしか出番が無いですね。
出典:新OVA第8話「火の七日間」
小屋
東岸壁の近くには、二課棟から伸びているパイプが行き着く小屋があります。この小屋は新OVA第11話「雨の日に来たゴマ」で猫を隠す場所として、同じく新OVA第15話「星からきた女」では秘密の入口として写りますが、普段は浮き輪やらサーフボードといったものが置かれているようです。
出典:TVシリーズ第46話「その名はゼロ」
出典:新OVA第15話「星からきた女」
出典:新OVA第15話「雨の日に来たゴマ」
NEW OVA「火の七日間」で、隠れてハゼの干物の生産をしていた場所があり、その特徴的な構造として「外光が屋根板の隙間から射す」安物の建物というのがあります。話の流れ的に既存の物を利用していると推測され、これに該当しそうな場所がこの小屋。
下記の発電室の可能性もあるのですが、発電室のような重要な施設(若しくは跡)が雨漏れするような構造で作られるとは考えにくく、「雨の日に来たゴマ」でも人目に付きにくい場所として選ばれていたことも考えると、干物製造していたのは小屋の可能性高しというわけです。
たてもの探訪「特車二課棟」編
第2小隊ハンガー 側面図
出典:THIS IS ANIMATION PATLABOR THE MOVIE & OVA 機動警察パトレイバー設定資料全集
これは南の第2小隊ハンガーから見た側面図です。画像左側にあるのが玄関や各オフィスある建物で、1階には事務室や整備班オフィス、2階には隊長室や電算機室があります。
小隊オフィスの部分はプレハブ建増と書かれている通り、工場だった頃にはなかった物で、特車二課が使うようになってから増築されたはずの箇所です。元からあった2階部分(電算機室・旧作業監督室)の床面と同じ高さになるように、鉄骨が組まれています。
この2階部分にはハンガーを1周出来る回廊があります。回廊は小隊オフィスの床と同じ高さで、画像右の方(東・海側)にも伸びています。この回廊は宿直室2階の廊下部分ともつながっているのですが、宿直室2階の廊下は若干低い位置にあるため、数段の階段が作られています。
ハンガーにはクレーンもありますが、使われたのはそんなに多くありません。劇場版1作目で絶縁や防水処理を指示する榊班長の背後を左から右へ動いていくシーンや、TVシリーズ第32話「再会」で、太田機を吊るしてシゲさんが点検しているシーンくらいです。
出典:TVシリーズ第32話「再会」
二課棟1階 間取り図
出典:機動警察パトレイバー 完全設定資料集 vol.3劇場編1
左右に広がるハンガーに挟まれた中央部にある建物の1階平面図です。
事務室(121) ※以下、括弧内の数字は間取り図内の数字と対応
玄関の右側に事務室があるのですが、ここに職員がいた描写は劇場版やTVシリーズ通して1度もありませんでした。しかし、TVシリーズ第30話「グリフォン参上!」で、進士さんから「さっき事務の方で聞いてきたんですけど」という台詞があり、他にそれらしい部屋もないので、事務室に職員はいるのでしょう。伊藤さんが執筆した劇場版のノベライズでも、事務員が配置されているのが明らかになっています。
玄関ロビー(113)
玄関ドアを開けるとロビーがあり、応接用のソファーやテーブルが置いてあるのですが、ここもほとんど写りません。写るのはTVシリーズ第37話「安心売ります」で、保険屋のおばさんと太田がこのロビーと階段の付近で会話するシーンくらいです。
WC(35)
階段のそばにWCがありますが、ここは男子トイレです。そんなに広くないトイレであることが、TVシリーズ第37話「安心売ります」の密談するシーンで明らかになりました。
出典:TVシリーズ第37話「安心売ります」
整備?(118)
トイレと廊下を挟んで反対側にある部屋ですが、ここは映っていないと思います。
給湯室(104)
ここも写ったことはないと思います。場所から言って整備班が使っているのでしょう。
整備オフィス(115)
この整備班オフィスは、劇場版1作目で「MITからの通信が入った」と南雲隊長とシゲさんや榊班長が会話しているシーンや、TVシリーズ第33話「シャフトの犬たち」で、野明がヤカンを持ってお茶を淹れに行ったシーンなどで写っています。玄関の方にあるドアから入ると部屋の右奥に榊班長の机があり、その机の正面には神棚があります。
出典:機動警察パトレイバー 劇場版
出典:TVシリーズ第39話「量産機計画」
整備作業室・備品置場(112)
ここは、TVシリーズ第20話「黒い胎動」で、太田が遊馬に説教をするシーンで写っています。また、この部屋の1階には工具などが備え付けられた工作机があるのですが、TVシリーズ第29話「特車二課壊滅す!」で、野明がシゲさんに昼飯の注文を聞きに行くシーンで写りました。後に改装したらしく、新OVA第11話「雨の日に来たゴマ」で一時的に猫を隠しておく場所としても写り、新OVA第16話「第二小隊異状なし」では、榊班長がデスクトップPCのキーボードをマニュアルを見つつ一本指でタイプしているシーンでも写っています。
出典:TVシリーズ第20話「黒い胎動」
出典:TVシリーズ第29話「特車二課壊滅す!」
出典:新OVA第11話「雨の日に来たゴマ」
出典:新OVA第11話「雨の日に来たゴマ」
防火用水(109)
防火用水を使うシーンはないですが、新OVA第2話「逆襲のシャフト!」で、南雲隊長が赤いマイカーをこの脇に駐車するシーンがあります。
出典:新OVA第2話「逆襲のシャフト!」
分隊オフィス支柱(114)
この部分と2階にある小隊オフィスは最初からあったわけではなく、備品置場のプレハブ同様、あとから増築された部分ということです。
引込線(91)
ハンガーの中央部分を走る引込線ですが、これは劇場版第1作目で、川に落ちた太田機が台車に載せられ後退していくシーン(榊班長「よく洗って温風かけとけ」のシーン、後述の2階オフィスと2階回廊の画像参照。)で使われただけだと思います。上にある埋立地の全景画像を見ると分かるのですが、引込線は南側の船着場から第2小隊ハンガー・第1小隊ハンガーを貫いているようです。
二課棟2階と第1小隊ハンガー 間取り図
出典:機動警察パトレイバー 完全設定資料集 vol.3劇場編1
第1小隊ハンガーは北方向に増築された部分があるので、第2小隊ハンガーより広くなっているようです。
隊長室(106)と喫煙コーナー 間取り図
2階北の角は隊長室になっています。ここは頻繁に写ります。
出典:機動警察パトレイバー 完全設定資料集 vol.3劇場編1
隊長室と2階ロビー(喫煙所)です。隊長室は、ドアを開けると正面に後藤隊長の机、右側に南雲隊長の机があります。
南雲隊長の机の脇にはパーティションで区切られた更衣コーナー?があります。劇場版1作目で、後藤隊長と南雲隊長が話しているシーンで、ここを使っているシーンがあります。
出典:機動警察パトレイバー 劇場版
また、後藤隊長の机の前には予備の椅子が置いてありますが、話をしにきた榊班長が使ってることが多いです。ここには冬にはストーブが置かれたりもします。
出典:機動警察パトレイバー 劇場版
2階ロビーの喫煙所ですが、背もたれのないベンチが隊長室側に置かれていて、階段の方からみた設定画を観ると、背もたれのあるソファが置かれている壁側には、紐を引っぱってスイッチをオンオフする換気扇が描かれています(下の画像だと紐がないですが)。ここでタバコを吸うのは、TVシリーズ第32話「再会」で描かれていたように、後藤隊長と榊班長だけのような気がしますね。
出典:TVシリーズ第32話「再会」
出典:TVシリーズ第13話「殿下お手柔らかに」
出典:TVシリーズ第13話「殿下お手柔らかに」
課長室(107)
2階南の角は課長室です。この部屋は課長が滅多に二課棟に来ないので登場回数は少ないのですが、劇場版1作目では南雲隊長が第1小隊の零式への機種転換訓練の延長を聞かされたシーンや、後藤隊長と遊馬が課長に呼び出されたシーン、TVシリーズ第7話「栄光の97式改」で、南雲隊長が課長にSRX-70採用について意見をしに行くシーン、TVシリーズ第17話「目標は後藤隊長」などで写りました。
出典:機動警察パトレイバー 劇場版
出典:TVシリーズ第7話「栄光の97式改」
劇場版2作目では、南雲隊長が課長代行をしているので誰も使っていませんね、途中までは。応接室みたいになっていたようで、二課に訪れた荒川がこの部屋に通されています。この頃には部屋にハイビジョンテレビとハイビジョンビデオデッキが置かれています。しかし、デッキの操作ボタンが大量にあるためか、再生したりできるのは南雲隊長だけみたいです。
2階WC(35)
2階のトイレは女子専用です。劇場版1作目では、隊長室で後藤隊長がニューヨーク市警に行っているシゲさんに国際電話しているのを野明が覗き見るシーンがありますが、あの前に行っているトイレが、2階女子トイレです。新OVAだと第5話「災厄の日」で、虫歯でボーっとしている野明がトイレに入って行くのを見て、太田と遊馬が会話するシーンで登場します。
出典:機動警察パトレイバー 劇場版
会議室(103)
この会議室には、2階ロビー側の出入口と、第1小隊ハンガーにつながる出入口(下の画像、ひろみちゃんの後ろのドア)の2つがあります。
新OVA第5話「災厄の日」で、痛み止めを飲み過ぎた野明が会議中に居眠りしてしまうシーンや、第14話「雪のロンド」で会議中に遊馬が物思いに耽りながら鉛筆転がして、熊耳さんの新フォーメーション案説明を聞いてなかったシーンで写っています。
出典:新OVA第5話「災厄の日」
この会議室は、1度だけその目的以外で使われたことがあります。それはTVシリーズ第13話「殿下お手柔らかに」で、王子が寝泊まりする部屋として使いました。
出典:TVシリーズ第13話「殿下お手柔らかに」
2階給湯室(104)
2階給湯室は小隊オフィスと近いので、わりとよく写ります。新OVA第16話「第二小隊異状なし」で、太田が岩手に帰郷したときに買ってきた土産が数カ月ぶりに発見されるのや、NEW OVA第14話「雪のロンド」で遊馬がコーヒー淹れてるときに加嶋が現れるのが、ここです。永井真理子ならぬナカイマリコのコーヒーカップが置かれていたのは、この給湯室から第2小隊側ハンガーに出て電算室横を通り、第2小隊オフィスまで行った出入口のところです。
出典:新OVA第16話「第二小隊異状なし」
出典:TVシリーズ第20話「黒い胎動」
出典:NEW OVA第14話「雪のロンド」
資料電算機室(102)
工場として使われていた頃は、事務及び作業監督室だったので窓はあったのですが、電算機室になってからは内側から板で塞がれています。出入口は2つあり、第2小隊ハンガーに繋がるドア、2階ロビー・喫煙コーナーの方へ繋がるドアがあります。
劇場版1作目で、厚着をした遊馬が篭って暴走事件の解析をしていたときは土足厳禁でした。しかし、TVシリーズの世界では土足厳禁では無さそうです。TVシリーズの第38話「地下迷宮物件」や、新OVA第13話「ダンジョン再び」では、地下探索している第2小隊のバックアップをこの部屋で行っていました。
出典:機動警察パトレイバー 劇場版
小隊オフィス(100,101)
ひとつの広い部屋を、廃材の板で区切って2つに分けています。北側が第1小隊、南側が第2小隊になっています。床から天井まで区切られているわけではなく、天井付近は隙間があります。また、西側に人が通れる隙間があり行き来出来るようになっています(ひろみちゃんの後ろにある書類棚の左側)。
出典:TVシリーズ第29話「特車二課壊滅す!」
TVシリーズ第39話「量産機計画」で、第1小隊の五味岡巡査部長が第2小隊のオフィスを訪れていましたが、この隙間を通って来たのでしょう。というか、第2小隊の騒ぎのほとんどは第1小隊のオフィスにも筒抜けですよね。太田の声とかうっさいだろうなあ。
出典:TVシリーズ第39話「量産機計画」
備品置場(98)
プレハブの2階部分です。
廊下(72)
宿直室の廊下です。若干第1小隊ハンガー側にあるようです。
二課棟2階と第2小隊ハンガー 間取り図
出典:機動警察パトレイバー 完全設定資料集 vol.3劇場編1
2階オフィス(82)と2階回廊
第2小隊のオフィスと備品置場の間、吹き抜けの場所に引込線が通っていて、その上を2階回廊が交差していますが、引込線使用時この部分の回廊は、下の画像のように跳ね上げられるようになっています。
リボルバーカノンが収められている武器ロッカーも、この脇1階にあります。この吹き抜けの場所にはアコーディオンカーテンみたいなのがあるのですが(下の画像太田の後ろ)、大体開けっ放しのようです。
出典:新OVA第16話「第二小隊異状なし」
階段(85)
平面図の左下に複雑そうな階段があります。これは2階給湯室から第2小隊ハンガーに出てすぐのところにある階段です。この階段が設置されている場所はハンガーの地面より1メートルほど高くなっているために、その場所に降りる階段とハンガーの地面に降りる階段の2つの役割があり、そのために踊り場が設けられているのです。その様子が分かりやすい画像が下の2つ。
榊班長がハンガーでタバコを吸っている様子ですが、榊さんの後ろにあるのがその階段。背景に見えるガラス窓とドアはどうみても整備班オフィスのですが、本当はこのドアは開く方向が逆で、隣にもう一つドアあり、そのドアは1F給湯室に繋がっているはずでなのですが……。
余談ですが、実写版のエピソード0がネットで無料公開された際に、シゲさんがハンガーでタバコを吸っているのがおかしいというのも見かけたんですが、上記の通り榊さんもハンガーで吸ってんですよ。これが終業後だから良いというのであれば、実写のも始業前みたいですからね。たいして変わらないでしょう。
それと実写版で整備班のつなぎが白すぎるとか言ってる人を大量に見たんですが、スマホで見てたんだか、小さいモニターで見ていたんだか、モニターの輝度やコントラストを最大にして白飛びした状態で見てるんだか知りませんが、まともな輝度やコントラストと20インチ大の画面で見ればそんなことは全然なかったですね。別にどっちの肩を持つとかではなく、言ってる人はちゃんと見てるんだろうかという疑問です。
旧社員寮(宿直室・食堂)間取り図
宿直室2階
出典:機動警察パトレイバー 完全設定資料集 vol.3劇場編1
宿直室は工場の頃に社員寮として使われていた建物です。
宿直室2階
宿直室2階は6部屋あるのですが、北側の3部屋(下の画像では右側)が備品置場として使われ、南側の3部屋(画像左側)が宿直室になっています。一番ハンガー寄りの部屋(画像では一番奥)が整備班仮眠室、真ん中の部屋が男子隊員仮眠室、海側の部屋(画像では一番手前)が女子隊員仮眠室になっています。
出典:TVシリーズ第3話「こちら特車二課」
また赤い公衆電話が置いてあるのもこの2階廊下で、階段の近く(62)に置かれています。電話線はかなり余裕をもたせてあるらしく、TVシリーズ第18話「スキスキ野明先輩」では、電話機自体を男子隊員仮眠室に持ち込んでいました。
ハンガーと宿直室を繋ぐ渡り廊下(廊下と言ってもかなり短い)が、上の画像の階段の部分です。宿直室2階の床の高さは、ハンガーの2階回廊より若干低いので階段が作られています。一番奥に見える壁は備品置場(プレハブ)の壁です。
仮眠室(57,56,60)
仮眠室の間取りは基本的に3部屋とも同じです。ただ、TVシリーズ第26話「私が熊耳武緒です」で、女子用仮眠室にロッカーが3つ置かれ、流しなどの水回りがなくなっていたのですが、この話のみの設定だったようです。
出典:新OVA第8話「火の七日間」
出典:TVシリーズ第26話「私が熊耳武緒です」
トイレ(64)
宿直室のトイレと思われる場所は、新OVA第8話「火の七日間」で登場するのですが、どうやら設定とは異なるようです。
宿直室1階 間取り図
出典:機動警察パトレイバー 完全設定資料集 vol.1TV編
宿直室1階は2階と同じ間取りだったようですが、改装されて食堂と調理室になっています。機動警察パトレイバー 完全設定資料集 vol.1TV編によると、1階の設定はTVシリーズ制作時に追加設定で作られたと記載。
食堂(14)
食堂にはテーブルがいくつか置かれており、壁際には自販機が設置されています。食堂南の壁には窓があり、さらに外壁の窓から外が見える事になっているのですが、食堂の窓は話によってあったりなかったりします。
出典:TVシリーズ第33話「シャフトの犬たち」
出典:TVシリーズ第33話「シャフトの犬たち」
出典:TVシリーズ第26話「私が熊耳武緒です」
設定通りなら野明の右側の壁にガラス窓があるはずなのですが、改装して無くしたんでしょうか↓
出典:新OVA第5話「災厄の日」
調理室(26)
食堂の北側に調理室があります。業務用の大きめの冷蔵庫やコンロ、流し台、調理台、食堂へ料理を出すカウンターがあります。調理室の東側には食料倉庫もあります。
出典:TVシリーズ第26話「私が熊耳武緒です」
風呂(31)
宿直室1、2階には風呂があるのですが、設定には壊れていて使えないといったことが書かれています。しかし、1階の風呂場は何度か使われています。TVシリーズ第18話「スキスキ野明先輩」で野明と香貫花が、同じく第28話「怪しいふたり」で遊馬と太田が入浴中にひろみちゃんが入ってきます。そして新OVA第8話「火の七日間」で、シゲさんも入浴しています。
出典:TVシリーズ第18話「スキスキ野明先輩」
出典:TVシリーズ第28話「怪しいふたり」
出典:新OVA第8話「火の七日間」
シゲさんは新OVA第7話「黒い三連星」で、宿直室の外でも風呂に入っていました。
宿直棟外観 俯瞰図
出典:THIS IS ANIMATION PATLABOR THE MOVIE & OVA 機動警察パトレイバー設定資料全集
北から見た宿直室とその周辺です。
劇場版2作目の宿直室
劇場版2作目で二課棟が襲撃されますが、その際の描写で北側の部屋が備品置場ではなく、仮眠室として使われているのが分かります。
畑とニワトリ小屋
宿直室の北側には、トマトなどが作られる畑やビニールハウス、ニワトリ小屋があります。設定画には豚用の檻もあるのですが、豚が出て来たことはないです。
出典:TVシリーズ第29話「特車二課壊滅す!」
出典:新OVA第5話「災厄の日」
屋上物干しスペース
宿直室の屋根には物干しスペースが増築されています。この場所に登るためには、宿直室とハンガーを繋いでいる渡り廊下の途中にドアを開けて外の階段に出て登ります。いつもは物干スペースとして使われていますが、ここでクリスマスパーティーが催された事があります。
出典:TVシリーズ第10話「イヴの罠」
ハンガーの屋根
物干しスペースに行くために階段を一番上まで登ると、踊り場がハンガーの屋根とほぼ同じ高さになっており、ハンガーの屋根で日向ぼっこしたり出来ます。
出典:新OVA第14話「雪のロンド」
宿直室の東側(海側)
宿直室の東側では色々ありました。プロパンガス漏れで爆発が起きたり、地下道のマンホールが見つかったり。
発電室
建物すぐ横での描写は、新OVA「火の七日間」でありました。この建物は壁がブロック積みで出来ており、下の画像ではブロック積みの壁とパイプが写っているので判別がつきますが、内部はたぶん写ったことはないと思います。
出典:NEW OVA第8話「火の七日間」
実写版パトレイバーの二課棟はどうなのか
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実写版の特車二課棟は、公式サイトのヴァーチャルツアーで見ることが可能(追記:首都決戦公開後しばらくしたら無くなりました)で、第1章のブルーレイに付いてるブックレットに平面図が載っています。
劇場パンフレットによると、実写版の二課棟住所は東京都大田区城南島9丁目2-1で、2002年の騒乱事件で旧施設が被害を受けた為に移転したそうです。劇場版2作目の襲撃で、アニメ版の二課棟は使えなくなったんですね。ちなみに実際の城南島には9丁目はありません。
出典:『THE NEXT GENERATION パトレイバー』エピソード7
上の画像のシーンはエピソード7の湯浅弘章監督からの注文で出来上がったシーン。地元ではパトレイバーTVシリーズが放送しておらず、劇場版から入ったという湯浅監督は、パトレイバーと言うと二課棟と夏の雲というイメージがあったそうで、上の画像で入道雲はマットペインティング(簡単に言うと絵)で付け足されたものだそうです。
ところで、アニメと実写で同じような設定がいくつかあります。まず、オフィスがプレハブだという点、整備作業用タラップがある点、引込線に似たレールが床にある点、ニワトリ小屋などです。
しかし、ないものもあります。それはクレーンです。レイバーを釣れるようなクレーンがありません。実はブルーレイのブックレットに載っている見取図には、レイバードックを跨ぐように、ホイスト式橋形クレーン(下の画像のような物)らしきものが描かれているのですが、ヴァーチャルツアーや公式ブログのハンガー内画像を見る限り、無さそうです。
監督のインタビューを読むと、イングラムをフルスケールで作ることで、ハンガーセットの中を美術(装飾物や装置など)で色々埋めることになり、それが結局ディテールやリアリティに繋がった。ということらしいですが、こればっかりは無理だったのでしょうか。
他に無い物は、宿直棟(風呂・食堂を含む)です。宿直時に寝る場所としては、ドラマ内で整備班用と思われる宿直室、小隊用はオフィスにある個人ロッカーのデカい版みたいなスペースくらいしか出てきません。更衣室は別にあるんですが、どこにあるのか不明。飯はハンガーで食ってるし、風呂については寸胴鍋にプロパンガスを繋いだ風呂にシゲさん入浴してるのは出てきますが、普通の風呂は描写無し。前の二課棟より設備不足の可能性があります。
それ以外にも無いもがあって、存在することになっている課長の課長室。課長自体は姿形も登場しないのですが、イベント宣伝用パネルなどには「課長はいるが不在がち」みたいなことが書いてあります。あと整備班の事務室。
逆に前はなかった物があります。射撃練習場です。カーシャがスナイパーライフルの調整してたあの場所です。この設備がも具体的にどこにあるのか謎。
記事を読んでスクロールしていくと、記述と図を参照しながら読むのが厳しいにも関わらず、最後まで読んでいただきありがとうございました。設定画は引用した物以外にも、各部屋のパースの付いた設定画など、たくさんあります。これらは設定資料集が数多く出版されていますので、ぜひ手にしてアニメを見ると面白いですよ。