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『フォー・オール・マンカインド』のジェームズタウン月面基地ツアー映像

 Apple TV+(定額制の見放題動画サービス)で配信されている『フォー・オール・マンカインド』という作品があります。

 これは、人類初の月面着陸をアメリカではなくソ連が成功させたという歴史改変ジャンルの物語です。お陰で米ソ間の宇宙開発競争はなかなか終息せず、アメリカがまた先を越されまいと宇宙開発に躍起になり、その中で暮らす色んな個性を持った人たちの物語です(だいたいNASA関係者ですが)。現在、シーン2まで配信されていますが、シーズン3撮影中とのこと。久しぶりに一気に見た海外ドラマですが、そのくらい面白かったです。

tv.apple.com

 この作品の中で、NASA月面基地として「ジェームズタウン基地」というのが登場します。これは、アポロ計画で使用されたサターンV型ロケットの第3段目を改造し、宇宙実験室としたスカイラブ計画から派生した居住モジュール、という設定です。1972年10月12日に月面に着陸したことになっています。ちなみに"ジェームズタウン"というのは、大英帝国が北米に最初に作った植民地の名ですので、由来はおそらくここからでしょう。。

 そのジェームズタウン基地のツアー映像が、元NASAの宇宙飛行士であり、スペースX社のエンジニアでもあり、『オール・フォー・マンカインド』の技術アドバイザーである、ギャレット・リーズマン氏のツイートで見れます。(この映像の他に、基地のAR展開図解をAppleのTVアプリで見ることが出来ます)

 単純に何を言っているのか興味があったので、日本語に訳してみました。メモ代わり書いときます。

 人類は常に月に魅了されてきた。そして、月への旅は人類のもっとも偉大な成果の1つでした。しかし、月への着陸はその始まりに過ぎないとしたら、どうでしょう?

 1974年のジェームズタウンへようこそ。ジェームズタウン基地は、月に設けられた最初の恒久的な前哨基地です。探査と研究のために作られたこの建物は、住居として設計されています。一度に3人の宇宙飛行士が3ヶ月間滞在できます。五つ星ホテルという訳ではなく、プライバシーもほとんどありません。しかし月着陸船に比べれば、かなり広いです。

 月での生活には利点があります。重力のない宇宙と違って月の重力は地球の6分の1です。だから、月でシャワーを浴びることができるのです。十分な重力があるので、落ちた水はリサイクルされるようにしました。

 では、厨房に向かいましょう。ここの壁際には折り畳み収納式のテーブルがあります。テーブルに組み込まれたカップホルダーは、食べ物を保温するヒーターにもなっています。

 おふくろの味という訳にはいきませんが、料理を食べるために基地に来るのではないのです。

 壁には各ミッションのワッペンが貼られているので、自分の足跡を残すことが出来ます。これはアポロ21号でモリー・コッブが初めて基地に来たときのものです。

 1960年代からNASA宇宙飛行士の非公式マスコットであるスヌーピーは、ジェームズタウンのいたるところで見かけることができます。スヌーピーは色分けされているので、私物の区別にも便利です。

 こちらが寝室です。6分の1の重力では、梯子なしで上の段に飛び乗ることができます。個人的なスペースはかなり限られているので、プライバシーカーテンやちょっとした飾りをすることで、より効果的に空間を活用することができます。

 低重力の生活で危険なことの1つに、骨と筋肉の量が減少してしまうことがあります。ローイングマシンやプルアップバーを使用することができます。また、このような抵抗バンドを使用するのもよいでしょう。地球で100ポンドを持ち上げられるなら、月ではその6倍を持ち上げられるからです。

 月の石を取りに行くなら、エアロックから出る必要があります。この部屋は減圧・加圧ができるので、ステーション全体の空気を抜くことなく出入りできます。

 宇宙空間の放射線は、宇宙飛行士にとって大きな危険となる可能性があるため、レゴリス(ここでは月面の砂のこと)を基地の屋根に敷き詰めて遮蔽しています。しかし、レゴリスは電子機器をダメにし、我々を病気にすることもあります。そのため、ジェームズタウンでは基地内に特殊な空気ろ過システムを設置しています。

 この外部機器のいくつかは、ちょっと見覚えがあるかもしれまれません。燃料タンク、RCSスラスタ、4つの降下エンジンは、すべて月着陸船から転用されたものです。

 クルーが一人もいない月面の基地?

 また、屋根にはソーラーパネルが設置されています。なぜなら、月の南極に基地があるので、太陽は常に地平線上の非常に低い位置にあります。そのため、パネルは90度回転して太陽光を取り込み、基地に電力を供給します。

 将来的な事も考えて、ハッチを2つ用意し、拡張できるようにしました。

 ではオペレーションエリアを見てみましょう。ここではクルーがさまざまなミッションの計画を立てたり、記録を取ったりすることができます。モニターでは、ローバー、採掘現場、そのほか月面のあらゆるものを監視することができます。ここには電源、消火システム、電子機器、コンピューター処理などの制御盤があります。

 ステーション内には、ハイテクを駆使した船内通信システムもあります。宇宙飛行士は、(交互通話ではなく)同時通話で映像や音声を流しながら、NASAと運用上の交信をしています。しかし、個人的な会話はすべてコムベイだけで行い、休憩時間には家族に電話することもできます。

 ジェームズタウンは、アポロ時代に月面基地が作られていたら、どのようなものだったかを示しています。当時の技術から考えれば、可能な限り現実的なものでしょう。

 私はギャレット・リーズマン。元NASAの宇宙飛行士、国際宇宙ステーションの乗組員です。『フォー・オール・マンカインド』の技術アドバイザーでもあります。

 アポロ時代から長い道のりを経て、現在の技術で月面基地がどのようなものになり得るかを考えてみてください。月に住むという考えは、我々が思っているよりも身近なのかもしれません。

ところどころ怪しい気がしますが、こんな感じです。シーズン3が楽しみです。

▼スカイラブ関係画像(flickrにあるNASAのアカウントで公開されています)

https://www.flickr.com/photos/nasa2explore/albums/72157634791373199

First Stages of the Saturn IB Rockets at Michoud Assembly Facility (Archive: NASA, Marshall, 01/68)

Skylab Artist Concept (NASA Archive, 1972)

Skylab Orbital Workshop  (NASA Archive, 1973)

A Rocket Becomes a Space Habitat (NASA Archive, 01/01/70)

▲製造風景(上に人が乗っているので大きさが分かりやすいかと)

#TBT: Third Crewed SkyLab Mission

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/07/Saturn_V_Vehicle_Configuration.jpg

 上の画像でS-IVBと書かれている箇所が第3段目です。外径が6.6メートルあります。スカイラブ内部は主な空間は2階分ありますが、ジェームズタウンは1階しかありません。ジェームズタウンの内装はスカイラブを元にしてデザインされているようで、シャワーカーテンやカップホルダー等よく似ています。