追記:この記事は2015年に書いたものなので、2023年現在は状況が変わっています。フロントガラス一部範囲のヘッドアップディスプレイ化は、軽自動車の新車で標準装備にしている車種も現れています。
つい先日、2つの自動車関連技術についての記事が出ました。
- ミラーレス車 公道へ 「カメラで代用」国交省解禁 来年6月にも新基準 死角減少に期待 毎日新聞
- 材料技術:フロントガラス全面がヘッドアップディスプレイに!? 積水化学が新素材 - MONOist(モノイスト)
この「サイドミラーをカメラで代用する」のと、「フロントガラス全面が表示画面化する」という二つの技術は、映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993)で劇中に溶け込むように描かれていました。
これらのアイデアは、映画公開以前からあったものですが、公開から20年以上経った今見ても、違和感無く見れるのは、今とあまり変わらないデザインの自動車に搭載されている(映画見ていてもミラーレスだった事に気づいていない方もいらっしゃるようですし)からかもしれません。
フロントガラス
まずフロントガラスのディスプレイ化についてですが、映画の中ではこのように描かれています。
出典:映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』
上の画像だとマップがスピードメーターより前に映ってますが、多分ミスでしょう。他のカットでは……
出典:映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』
このように表示されているので、フロントガラス面に表示されるとみて間違いないでしょう。小説版で、遊馬の車にはFWD(フロントウィンドウディスプレイ)を面白半分に改造したものが付けられている、という件があるので、それの一種だとは思いますが、それ以上の技術的な事は不明です。
表示方法
HUD(ヘッドアップディスプレイ)と呼ばれるタイプは、現在の技術でも自動車用で幾つか存在し、この手法のものは結構前(10年位前には見た覚えがあります)から発売されています。
方法としては日本ではデンソーが開発しているフロントガラス投射型というのと、ディスプレイ表示をフロントガラスやフィルターに反射表示させる方法のがあるんですが、今のところ後者が主流。
反射式のは後付け出来るタイプのが市販されているので、こちらの方が種類が多いです。日本では、フロントガラスにフィルムなどを貼ると車検が通らないのと、検問で無用の疑惑をかけられかねないので、フィルムではなく、本体にクリアパーツを付けて使うようになっています。これはコンバイナー式と呼ばれて高級車以外の一般車に採用されています。
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同じように、ダッシュボードに置いてディスプレイを反射させるものとして、スマートフォンの速度表示アプリがあります。GPSを利用して、移動距離と時間から速度を割り出すらしく、GPS受信出来なかったりすると、精度的にはイマイチですが、遊び半分に使うには面白いアプリです。
あとは無機ELを使用した自発光式透過型メーターとかもあります。他に似たような技術として、パイオニアが発売しているカーナビにサンバイザー型のカーナビゲーションシステムがあります。
これはフロントガラスに写っているように見せる仕組みで、実際にはフロントガラスには何も映っていません。例え前を向いていても、バイザーから視線が外れるとその表示は見えません。
これもバイザー部分がハーフミラーになっており、バイザー後方から投影されたのを映しているだけで、バイザー部分が自発光しているわけではありません。
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一番上で紹介した積水化学の技術は、反射を利用した虚像ではなく、「ダッシュボードに設置された装置からフロントガラスにレーザーを照射し、フロントガラスに含まれる中間膜そのものが発光する」と言う事なので、車検などの問題はクリア出来るように開発されているでしょうし、まさに劇中のシーンそのままになるわけです。
コンバイナー式や投射式は表示面が下になりがちだったりして、各社その辺を改良しているんですが、フロントガラス全面が対象となるのがこの新技術。
果たして普及車にまで浸透してくるのか、それとも自動運転技術採用のほうが先になるのか。自動運転が先に来たとしても、車のインターフェイスとしてこの手のものは必要になるので普及すると面白そうです。
現在は、表示出来る色が限られているようですが、今後フルカラー表示を可能にするよう取り組むそうなので、市場投入を目指している2018年にどんな物が出てくるのか楽しみです。
サイドミラー
つぎにミラーレスについてです。劇中の多くの車にはサイドミラーが無いのはこれらのシーンで分かります。
出典:映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』
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しのぶさんの車(ユーノスFX、現実にはマツダのユーノスブランドは1996年に廃止)と後ろの車もミラーがありません。このシーンでは、後ろのバスや隣の車線にいるワンボックスカーはミラーがついていますし、他のシーンでも車によってミラーの有無があるので、過渡期にある事が伺えます。
ちなみに、このパトレイバー2に登場するほとんどの乗用車をデザインしたのは、河森正治氏。10年後が舞台ということで、10年も経つと車のデザインも空力性能からもっと丸っこくなるとラフデザインをしたそうですが、パトレイバーのメカデザイナーである出渕裕氏からのオーダーで、四角さを残すデザインになったということです。
ほとんど映らないので分かりづらいのですが、上記のバスのフロント部や、パトカーでいくつか丸さのある車がデザインされています。そして、四角さの残る車としては、荒川というキャラクターが使っている車が角張っており、更にミラーレスです。
出典:映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』
余談ですが、パトレイバー2の世界には、現実でも見かける普通乗用車のナンバー以外に、荒川の車の様な横長ナンバープレートが存在します。現実でも、10年以上前にナンバープレートのデザイン変更が検討された事があるのですが、その後続報を聞かないので、駄目になったんでしょう。
サイドミラー代わりのカメラ・モニター
車体後方を捉えるカメラはどこにあるのかというと、車の屋根後方にある情報アンテナに装備されていると設定画に書かれています。ではミラー代わりのカメラで捉えた映像はどこで見るのか?ということですが、設定画には運転席周りの物もあります。
出典:『機動警察パトレイバー2 the Movie』設定資料全集
これによると、ウィンカー、ワイパースイッチの左右にモニターがあります(ハンドルにもボタンらしき物が見えますね)。実際この位置にあった場合、視認性に問題がありそうな気もしますが、これは見栄えを優先しているであろう設定画なのをお忘れなく。実際にミラーレスの車が発売されても、モニター設置場所は色々でしょうね。視線移動が少なくて済むと言う、センターメーターも全車で採用されてる訳じゃないですし。
運転席左のシフトノブやコンソールが斜め面になっているのは、この車がユーノスブランドという事で、マツダのRX-7あたりからの継承でしょうか?