『機動警察パトレイバー ON TELEVISION』で、第13話から使用された3DCGアニメーションによるイングラムの映像(外装が次々と装着されていくやつ)は、1989-90年当時としてはクオリティが非常に高く、子供のころにあれをみて目を奪われた人も多いかと思います(私もその一人)。
あの映像はエンディングクレジットにもある通り、バンプレスト スタジオ・デュースで制作された映像です。アニメもデジタル撮影になるまでは、セル画をフィルムカメラで撮影し制作されていたわけですが、そういう都合上もあり、あのCG映像部分は変換作業が行われているようです。
どういうことかというと、CGアニメーションはコンピューター上で制作され、その映像をおそらくVTRに録画。そのVTRを再生して、フィルムに写すという変換作業です。
色々調べると、2000年以降になるとレーザーでフィルムに映す方法などが出てきたようですが、90年代くらいだと「再生した映像が写る(いわゆる)ブラウン管をフィルムカメラで撮影しフィルムに写す」という、キネコとかキネレコと呼ばれる工程を経ていたようです。要するにある程度劣化しています。
もともとパトレイバーのアニメは、新旧OVA、テレビシリーズ、劇場版(ミニパトを除く)は35mmフィルムで撮影されています。そのおかげもあってHDリマスターされたブルーレイや放送でも、粒状感が目立ちすぎることもなく高画質です。が、OPのCG部分だけは白浮きしたコントラストのはっきりしない映像になっています。
あるビデオソフト
しかし、あるビデオソフトにコンピューターから出力されVTRに録画された段階の、黒が締まってメリハリのあるイングラムの映像が若干カットされているものの収録されているのが判明しました。
映像自体は結構前に見かけていたのですが、あまり熱心に検索しなかったこともあって、今頃に記事に。
それはアメリカで発売されたビデオソフト『Beyond the Mind's Eye』です。内容的には、当時の古今東西の短編CGアニメーションをまとめたような形。アメリカではかなり売れたようでWikipediaにも項目があります。
イングラムの映像が収録されたのは、1992年12月23日に発売された『Beyond the Mind's Eye』。ビルボードのビデオ販売チャートで8位にまで入ったとのこと。
1997年にはアメリカでDVD化されたようですが、現在は廃盤のようです。探しても売っているところはebayとか、そういうところがほとんどなので。
しかし、この作品で音楽を担当した一人、ヤン・ハマーのオフィシャルYouTubeチャンネルで映像が公開されています。
エンディングクレジットには、プロデューサー、ディレクター、アニメーターの名前も出ています。
この3Dモデルを使用したCGアニメーションは1993年発売のマッキントッシュ用CD-ROMソフト「PATLABOR DIGITAL LIBRARY」用にも制作され、数年後にLDBOX(PATLABOR THE MOVIE COMPLETE WORKS)にも収録されたことがあります。頭部、胸部、腕などのパーツごとに回転する映像があったのですが、当時の映像圧縮クォリティ、映像自体が縮小され小窓に映るような形だったりで、細部があまりよく分からない状態でした。
『Beyond the Mind's Eye』のイングラム映像は、腕に外装が付いていくシーンなど若干カットされていますが、縮小などはされていないので細部も良くわかります。何より、黒が灰色がからずちゃんと黒ですし、変換による残像も少なく元の状態に一番近いでしょう。
この作品には『機動警察パトレイバー』のほかにも、 『超時空世紀オーガス』や『超機甲爆走ロボトライ』などのCGアニメが含まれており、色々と貴重なのかも。