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劇場版「サンダーバード」の劇場公開吹替版が……

劇場版「サンダーバード」の吹替版

 人形劇『サンダーバード』のテレビシリーズは過去何度も再放送されているので、番組名だけでもご存じの方も多いかと思います。スーパーマリオネーションという人形劇手法が取られているのですが、その『サンダーバード』は2本の劇場版が制作され、日本でも1967年と1968年に劇場公開されました。

 その際に、テレビ版とほぼ同じ声の出演陣(ほぼと書いたのは『サンダーバード6号』ではジョンとアランの声が違うため)で日本語吹替版が制作されました。しかしこの日本語吹替音源は後に幻になります。1970年代以降に民放で放送されたものの、声の出演陣が一新された吹替で放送されます。

 さらに1990年前後に劇場版2本のVHSとレーザーディスクが発売されるのですが、ここでも劇場公開版吹替は収録されませんでした。LDではデュアル音声仕様で民放放送バージョンと、ビデオソフト化用にノーカット吹替が収録されました。LD付属の冊子の記述によると

当時の吹替版がTV放送用のバージョン(劇場公開版とはキャスティングが異なり、さらにカット部分がある)しか現存せず、新吹替版となった。当時のメンバーによる再録音という企画もあったがそうだが、諸々の事情で中止となったとのことだ。

というあっさりとした説明があるのみ。このノーカット版で再度声の出演陣が一新され、ここまでに3バージョンが作られたことになります。この冊子にはテレビシリーズの演出を担当した加藤敏さんが寄稿があります。

今回、日本語版の演出をした長編2本『THUNDERBIRDS ARE GO』と『THUNDERBIRD 6』は、前回私はタッチしておらず、今回初めて演出するもので、大変新鮮な気持ちで、演出にあたることが出来ました。新キャストの皆さんも精一杯頑張り、期待を裏切らない新しい「サンダーバード」の日本語版作品に仕上がったと思っております。

 そして2003年にNHKの教育テレビ(現在のEテレ)でテレビシリーズが再放送され、劇場版もNHK衛星(2003年7月28・29日放送)と教育テレビ(2003年8月16日・2004年1月1日放送)で放送されました。

 この際に、劇場公開版吹替音源の捜索が行われたものの、劣化したフィルムが見つかったが使えるような状態ではなかったという情報がNHK公式サイトに載ったらしいのですが、サイトリニューアルが繰り返されるなかで見れなくなってしまったようです。この情報元は見つからなかったのですが、NHK公式サイトアーカイブで音源に関する記述があるのを見つけたので、一応リンクを貼っておきます。

web.archive.org

 この時新しいバージョンの吹替が再度制作されます。テレビシリーズ日本語吹替出演者の中で、存命かつ業界から引退していない方々を再結集させて録音したバージョンです。物故者や引退した方の持ち役は、新たに別の役者に配役されました。この時に制作された吹替が、DVDに収録されています。再結集したキャストは、ジェフ(パパ)、スコット、バージル、ミンミン、ペネロープです。

ブルーレイ化の機に

 前置きが長くなってしまったのですが、2021年夏に劇場版2本が日本初ブルーレイ化されます。海外、本国イギリスではだいぶ前に発売され、そして何故か日本より作品の知名度が低いと言われるアメリカでも2回も発売されているのに、なんで日本で発売されないのかとヤキモキしていたので、このニュースはとても嬉しいものでした。

 

 

 そしてこのブルーレイは発売する株式会社ニューラインは、ビデオソフト化に際し日本語吹替収録にこだわりを持って発売してくれると、映画ソフト収集ファンに知られている会社です。

 今回そのニューラインの公式ツイッターアカウントで、サンダーバード劇場版ブルーレイ化にあたり、既に収録が決定している民放版/VHS・LD版/2003年NHK放送版に加え、何とか劇場公開版を収録できないかと音源探索を行ったとツイートがありました。

togetter.com

 一連のツイートは↑のリンクで読んでいただきたいのですが、かなり衝撃的です。

2003年までは確実に『サンダーバード』劇場版の日本語素材が16mmフィルムとして存在した

というのです。過ぎてしまった事なのであれなんですが、2003年のNHK放送の機会にレンタル用16mmフィルムまで手を広げて捜索していれば、間に合ったかもしれないのが悔やまれます。

 今回の話で重要なフィルムレンタル業者なんですが、上映会用に借りたサンダーバードが吹替版だった、という情報はずいぶん昔に2ちゃん(現在5ちゃん)のサンダーバード関連スレッドに書き込みがあったんでんですが、それが裏付けられた訳です。

 しかしまだ発見の可能性が全く無くなったわけではありません。今回の探索で、東北新社やその他権利元にないというだけで、日本各地にあったフィルムレンタル会社から何らかの理由で放出されたフィルムがあるかもという希望が湧きました。日本では『サンダーバード』はビッグネームの作品ですし、日本各地に存在したフィルムレンタル業者で取り扱いがあった可能性は高いでしょう。そういう所から廃業や借金のかたとか、いろいろな理由で持ち出された可能性も十分あるのではないでしょうか。ただそういうものがあったとしても、フィルムの状態がどうなのかが問題ですが……

 ヤフオクなどのネットオークションやメルカリ、実イベントではフリーマーケットや蚤の市、そういった場所で発見なんてこともあり得ます。特にヤフオクでは何故か放送用に使われたアニメのフィルムなどが出品されたり、映画の上映用フィルムの出品もあります。まぁ果たしてあのような出品が倫理的にどうなのかという話もあるんですが、サンダーバードのように「権利元にも存在しない」というような場合は、保存という観点から重要な機会と場となり得るのではないでしょうか。

 ちなみに『サンダーバード6号』のブルーレイには、

オリジナル吹替音源による『サンダーバード6号』ダイジェスト映像(約14分)

が収録予定となっています。約14分という尺も一致しますし、ダイジェスト映像はビクターから発売されたサンダーバード6号のソノシートからの音源が利用されているとみていいでしょう。

 劇場版サンダーバードソノシートはいくつか種類があって、ほとんどが声の出演がテレビシリーズとは別人なんですが、ビクターの6号ソノシートの音声は明らかに劇場公開版吹替から抽出し、ダイジェスト版に編集されたものなのです。この音源はDVD版には収録されておらず、初収録です。