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パトレイバー・サウンドリニューアル版の立場は説明しないと分かってもらえない

2020年4月12日追記

 4DX上映するなんて話は知りもしない2019年11月にこの記事を書き殴ったわけですが、その後2020年春に1作目がサウンドリニューアル版音源を使用して全国規模で上映することが発表されました。

 そしてパトレイバー公式Twitterが投稿した内容によると、4月に上映予定(新型コロナの影響で7月に延期)の『機動警察パトレイバー the Movie 4DX』のパンフレットには、5.1ch化に際し行われた関係者インタビューを再編集して載せるそうです。”制作ノートを再編集して“とあるので、DVDに収録されていたブックレットのインタビューから再利用ぽい?

ーーー追記ここまでーーー

 まぁ説明しても分かってくれない人は絶対いるわけですが……『機動警察パトレイバー劇場版』(1989)、『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993)の2本は、1998年にデジタルのオーディオフォーマットに合わせ5.1chサラウンド化した「サウンドリニューアル版」が作られました。

 この音声はDVDとレーザーディスクに収録されました(その後ブルーレイにも収録)。日本国内で発売されたこれらの商品は、全て劇場公開時のオリジナル音声と共にリニューアル版が収録されており、ビデオレンタルショップ用の商品でも両方の音声が収録されています。(すっかり忘れていたんですが、初ブルーレイ化の際に抱合せで付いていたDVDに、リニューアル音声と英語吹替のみ収録されていました。訂正しお詫びいたします)

 サウンドリニューアル版は、現存する音源の仕様や現存具合などから、1作目はセリフやBGMが新規に録音されています。2作目は一部のセリフ、BGMが新規録音。声の出演は1作目はほぼ同一人物で再演、2作目は一部脇役が別人で録音し直されています。

 川井憲次さんのサウンドトラックは新規に制作され、違いを意識しながら聞くことができるのも、サウンドリニューアル版ならではの点。

 さらに声の出演陣の演技のアップデートも感じられます。例えばリニューアル版では南雲隊長の声である榊原良子さんの演技が変わっています。オリジナル劇場版音声に比べて落ち着いた感じになっているのです。これは私見ですが、この劇場版1作目以降に作られたパト作品などを通じて、南雲しのぶというキャラクターの捉え方の変化を反映したものではないかと、思ったりしています。

機動警察パトレイバー 2 the Movie DVDバージョン サントラ盤

機動警察パトレイバー 2 the Movie DVDバージョン サントラ盤

  • アーティスト:サントラ
  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 1998/12/05
  • メディア: CD
 
1999/PATLABOR THE MOVIE SOUND RENEWAL

1999/PATLABOR THE MOVIE SOUND RENEWAL

  • アーティスト:サントラ
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1998/12/10
  • メディア: CD
 

 

サラウンド効果はほとんど語られない

 上映やVHS・LD・衛星放送やケーブルテレビの再放送でオリジナル劇場版音声を聞きなれた方は、リニューアル版の微妙な違いから違和感を語る人が多いです。違和感として指摘されるのはセリフの言い回しやタイミングばかりであり、5.1chサラウンド効果の話はまずありません。

 この点については、繰り返し見たファンほどオリジナル劇場版音声のセリフのタイミングやアクセントの印象が刷り込まれているためでしょう。

 発声のタイミングが違う、声が違う、でダメと言う人に伝わるのか分からないのですが、5.1chサラウンドで聴くという事を新体験として受け止めることが出来れば、新たな楽しみが増える、という考え方も出来るのではないでしょうか。

 なぜこれほど「5.1chサラウンド化の効果という点が語られないのか?」という点については、日本のような住宅環境でサラウンド環境を構築している人は少数だ、ということもあるのではないかと。20年前から比べれば、DVDの普及でサラウンドスピーカーシステムの低価格化や各社商品ラインナップの充実で、だいぶ普及したとは思います。ヘッドホン型のバーチャルサラウンドシステムもありますが、やっぱりこういう商品に興味がある人はそんなに多くないのでしょう。

5.1chサラウンド 

 この5.1chサラウンド化で何かが変わったのか。オリジナル劇場音声はドルビーステレオ(家庭用はドルビーサラウンド)という方式で、前方3個(左右中央)、後方1個、重低音用サブウーハーの独立した信号記録は無し。中央のスピーカーはセリフ専用にみたいなもので、セリフの明瞭さが向上しています。

 5.1chというのは、chの数が5個(前方の左右中央、後方の左右)+1個(重低音用サブウーハー信号専用チャンネル有)。重低音の信号が独立記録され、5.1chでは後方がステレオ化されている違いもあります。

 5.1ch版の注目点の一つとしては、重低音を活かすサウンドデザインがされている点。劇場版はどちらも低音を生かせる内容です。特に1作目は風鳴などで効果があります。2作目でもヘリコプターの音やBGMなど、WXIIIも弦の厚いサントラなど挙げるとキリがないです。

 さらに後方がステレオ化されたという点は、臨場感に大きく影響します。劇場版2作目の冒頭で携行型ミサイルがレイバーに向かって飛んでくるシーンや、雨が降るシーンなどで非常に臨場感が出ています。

 こう言った5.1chサラウンド化によるクオリティアップがあるのですが、前述した通りファンの間ではほとんど語られることがありません。

 とにかくオリジナル劇場版音声を何回も繰り返し見て刷り込まれた人の場合、新録音のセリフの言い回しやタイミングの違和感についてばかりが語られます。逆に5.1ch版から入った人はあたりまえですがそういう事は感じないようです。

 5.1chから入った人というのは意外といるように思われます(どこぞの動画配信サービスでも使われてるという話もあるらしいですが、配信してる所が沢山あるうえ、全部加入して確認するのは無理なのでしていない)。

 5.1ch版が意外と見られていると考えるのは、ブルーレイの仕様のせいです。ブルーレイには、オリジナル劇場公開音声と5.1chリニューアル音声の両方が収録されているのにもかかわらず、メニュー画面で音声選択をしないと自動的に5.1chサウンドリニューアルが流れる仕様だからです。

 レンタル用のブルーレイも同じ仕様です。このせいで一部の人にはオリジナル音声が収録されていないという間違った認識が生まれています。これについては、メニュー画面の音声選択でオリジナル音声/リニューアル版がどっちなのかとか、一切記載してないことにも問題があるような気がしますが。

 海外盤の商品はともかく、日本国内でバンダイビジュアルから発売された、レーザーディスク・DVD・ブルーレイでオリジナル音声が収録されていない物は存在してないと思います(訂正:初ブルーレイ化の際に抱合せで付いていたDVDが、リニューアル音声と英語吹替のみ収録。ほとんど特典扱いみたいなものなので忘れていました。申し訳ございません。)

 ちなみにブルーレイに収録されているオリジナル劇場音声は、リニアPCMという非圧縮の音声で収録されていますので、ディスク入れてリモコンとかのメニューボタンを押してメニュー画面を表示させ、「SET UP」とあるところを選んで決定し、リニアPCMとある方を選んで決定をすればいいのです。

 余談ですが、サウンドリニューアル版が作られてから20年近く経っています。現在の技術ではコンピューターソフトウェアでセリフのみを高精度に分離することが可能になっており、予算やそのようなソフトがあるのを企画者が知っていれば、利用することで劇場公開版セリフのまま5.1chやそれ以上のサウンドフォーマットにすることも可能な時代です。

sonicwire.com

www.miroc.co.jp

極音上映の他にもリニューアル版を語るトーク付上映もありでは

 そんな具合で、5.1chサウンドリニューアル版音声の価値が評価されていないわけです。価値がないとか言う人もいるんでしょうが、それ以前にネットでも滅多に5.1chサラウンドについての評価や議論を見かけることがほとんどない。そもそも評価するのに5.1chのスピーカーシステムが必要で、ハードルが高いというのが現状なのでしょう。

2020年2月25日追記

 5.1chサウンドリニューアル版を使用した4DX上映が決定したそうです。今回は1作目ですね。これだけ全国的に5.1ch版が映画館でかかるのは初めてだと思います。

 4DXの椅子の動きや演出と音響とのバランスを考えれば、より立体音響や重低音を活かすことを前提に考えられたサウンドデザインである、5.1chサウンドリニューアル版が4DX向きでしょうね。

 一昨年から30周年企画で展示会などが行われていますが、公式側は「新作に向けて過去30年の作品の中身を1シリーズごとにおさらいしていく、という意図をもって」と言っており、展示会やイベント上映は過去のパトレイバーの展開順に行われています。去年から初期OVAに劇場版1作目をプラスした形になっているので、今後順次2作目、3作目と4DX上映されるかも?

mech.hateblo.jp

ーーー追記ここまでーーー

 

 「5.1ch化について語るイベントをやったら良いのでは?」ということになるんですが、5.1ch化が行われた98年にイベント上映が行われたくらい。近年では、2016年に東京・新文芸坐で行われた、押井守映画祭の上映でリニューアル版音声が使われたそうです。

web.archive.org

近未来を描きながら、その世界は限りなく現実に近く、ロボットを登場させながら丹念に人間味溢れるキャラクターたちを描く…コミックス、TVシリーズ、劇場作品、OVAとフィールドを拡大し1000万以上のファンを熱狂させた『機動警察パトレイバー』が、ついにDVDで登場!

日本アニメーション界の巨匠、押井守出世作、そして今も押井守を語るにはなくてはならない代表作『機動警察パトレイバー』が初めて迫力ある劇場用立体音響システム=5.1chを導入し、DVDで今蘇りました。

サウンド、音楽、SEのリニューアルが、より一層ドラマを盛り上げて感動を高めます。TOKYO FMでは、このスペシャル上映のためTOKYO FMホールを5.1chサラウンドシアターに改造し特別上映会を実施致します。押井守監督、冨永みーな川井憲次らのゲストも出演予定。必見です。


★☆ 押井守Presents『機動警察パトレイバー ザ・ムービー1&2』 ☆★
☆★       サウンドリニューアル特別上映会         ★☆

日時 : 1998年12月26日(土)
         昼の部/12:30開場 13:00開演
         夜の部/16:30開場 17:00開演
開場 : TOKYO FMホール(308席)
出演 : 冨永みーな川井憲次(予定)
チケット: 前売り1,905円(税抜)/当日2,381円(税抜)
         *チケットぴあにて11/29より発売開始

内容 : 『機動警察パトレイバー・ザ・ムービー』パート1&
     2の上映、CG版パトレイバーの特別上映(約1分)、
     実写版『パトレイバー』の特別上映(約2分)、
     押井監督、冨永みーな、音楽の川井憲次らの舞台挨拶
     もしくはメッセージ出演。(全員にポスタープレゼント)
主催 : TOKYO FM
協賛 : 代々木アニメーション学院
協力 : バンダイビジュアル

 2019年11月の現在、パトレイバー30周年を突破し、劇場版1作目公開から30年経ちました。新プロジェクト・パトレイバーEZYの真木プロデューサーが2018年12月の段階で「あと、そうだなあ2年ぐらいあいだをほとんど素材無しで繋がなきゃいけないってね、はっはっは」と言ってたように、2019年11月に東京立川の映画館で「極音上映」が行われます。この際に使われる音声はオリジナル音声版と告知されています。

 2023年には2作目も公開30周年を迎えるここいらで、再度この「5.1chサラウンドリニューアル版音声」について、リニューアルの録音演出・斯波重治氏や、音楽・川井憲次氏、当時のバンダイビジュアル側担当者氏、出演声優陣らが語るイベント上映が再度行われても良いのでは。

 

追記

 リニューアル版の最初のDVD発売時には、キャスト(大林・榊原、古川・冨永の各氏)やリニューアル版録音監督の斯波氏、音楽の川井氏、押井・竹中直人対談を収めたブックレットが付属しており、そこでサウンド・リニューアル版について詳しく語られています。

 その後、「PATLABOR ARCHIVES MOVIE」というDVD+結構な厚さの冊子(過去のニュータイプに掲載された記事などを再録)のセットになった商品にもリニューアル版のブックレットが再録されています。 

PATLABOR MOVIE ARCHIVES [DVD]

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